2011-05-30

尾鷲道     






以前から気になっていた台高深南部尾鷲道を歩いてきた。山と高原地図では全て破線で木組峠以南に至っては主稜線でありながら未掲載・・・歩く人も少なく年々荒れて行く一方という不遇のトレイル。大台ケ原へ至る道の中で最も古く、信仰の道でもある。気分的には海から山へ、尾鷲から大台ケ原への登りルートで歩きたかったが、大台ケ原発の帰りのバス便が少なく不自由なので、尾鷲に向けての下りルートを選んだ。下山後に海の幸で締めるのも悪く無い。


5月3日〜5月4日

大台ケ原ビジターセンター→日出ヶ岳→尾鷲辻→白サコ→雷峠→コブシ嶺(幕営)

コブシ嶺→一本木→木組峠→又口辻→古和谷分岐→古和谷→古和谷林道→尾鷲駅

面子は嫁さんと二人。

早朝から電車、バスを乗り継ぎ大台ケ原へ向かう。上市の駅からの大台ケ原直通バスは新たに和佐又登山口を経由するように変わっていて、大普賢へ行くのに便利になっていた。

10:30 大台ケ原ビジターセンター着

天気は薄曇り。おまけに黄砂が酷い日で数百メートル先が霞んで見えない。台高を歩く時は大峯の山並みを眺めながら歩くのが楽しみの一つだが、今日はたとえ晴れても大峯は見えなさそうだ。残念。

まずは今回のハイキングの最高峰となる日出ヶ岳に向かう。
大台ケ原の周回路は綺麗に整備され、ジーパンにスニーカーな人もちらほらで、でかザックな人は皆無。



泊予定地まで水場が無さそうなので、日出ヶ岳手前の水場で6L補給。(二人分)少し少ない気もするが、晩飯は湯戻ししないメニューにしたので大丈夫だろう。ぼくが4L嫁さんが2L担いだ。この量を外ポケットに入れると重心バランスが悪すぎるので、ザックの背面上部に来るようにパッキングした。





11:26 日出ヶ岳
黄砂で遠景は望めず。皆さん展望台でお弁当タイム。僕らは行動食を少しついばんで、尾鷲に伸びる稜線を確認して出発。








立ち枯れの正木ケ原の立派な木道。黄砂のおかげで更にシュール。今日の行程は飛ばし過ぎると泊予定地に早く着き過ぎるので、カメラ片手にのんびりハイク。




12:36 尾鷲辻

立派な東屋の裏手に伸びる踏み跡が尾鷲道。大台ケ原周回路の真新しい道標には尾鷲辻と表記はされていても、尾鷲道は記されていない。そこに道など無いかのような扱いだ。東屋で休憩中な方々から何処へ行くの?的な視線を背中に受けながら、ベコベコの火の用心看板の先に進む。道はこれしかないし、これが尾鷲道のようだ。






大台ケ原から別れた尾鷲道は雰囲気の良い明るい広尾根を緩やかに下って行く。道標の類は無い代わりにビニールテープの目印がかなりしっかりと巻かれている。踏み跡は案外しっかりと付いている。尾鷲道は稜線の西側をトラバースするように付いているが、稜線上を行く道も有るようだ。今回はある程度忠実に尾鷲道をたどったが、やはり山腹の道は倒木や山抜け箇所が多く、結局それらを巻くのに稜線近くまで追い上げられるので、稜線を通して歩いた方が快適そうだ。














15:09 雷峠?

地倉山をトラバースしてると右手から枝尾根が合流してくる。そこにまるで峠の目印で有るかの様に一本の杉の巨木がある。これが人の感覚を騙すような枝尾根の付き方で、何の疑いもなく大杉の前を通り枝尾根に乗ってしまった・・・ 進む事十分程で何となくコンパスを確認すると北上している。間違えて1402ピークに向かっているようだ。急いで大杉の地点まで戻った。




大杉の前に落ちていた看板。個人の山行記録を記した看板というのは初めて見た。しかもそこに記されたコースは、解る人には解ると思うが台高と大峯を繋いだとんでもないルートである。酒の席で冗談で決めたような山行計画だ。



どうもこの界隈、個人で掲げた看板、公の看板、地形図の表記が微妙にずれているようだ。地形的にはこの大杉の地点が峠だと思うのだが、山と高原地図にはもう少し南の何でもないような地点を雷峠と記している。


ここで同じ方に行く二人組のハイカーに出会った。少し話すと尾鷲道経験者のようだが、水を担いで無いらしい・・・遥か先の神明水という水場をあてにしてるらしいが、そこに着く頃には暗くなっているだろうし、水が出てるかどうかさえ怪しい。こちらも分けれる程の水は持っていないので、そのまま別れたが大丈夫だったのだろうか?



大杉の地点から北東に伸びるザレた急登の道が本来の道だ。そこを登りきるとなぜかコブシ峰と記された標(個人)が落ちていた。地形図ではもう少し先のはずだが・・・ 現在地に自信が持てないというのは何とも気持ちが悪い。進むべき方向にいかにもそれらしいハゲ山のピークが見えるのでそちらに向かう。











16:04 コブシ峰

ここでやっと公の道標で一安心。地図記載の嶺と峰の違いはあるが、細かい事は気にしない。そろそろ泊地を決めなければならない時間だ。事前の調べではここから少し下った樹林帯で幕営される方が多いようだが、今回は先日自作したテントの前室の耐候性のテストをしたかったので、この吹きさらしのハゲ山ピークに張る事にした。フラットで良い場所があったが、地盤が柔らかくペグの効きが少し甘い。





設営を終えると同時に雨が降り出したが、まだ仕事が有る。薪集めだ。メインの火種にBushbuddyを持って来たので、雨にやられる前に急いで拾い集めた。晩飯は少しの湯で済む献立にしてあるが、星空を眺めながらちびちびBushbuddyに薪をくべながら過ごしたい。ささやかな贅沢品である。


雨の日は広い前室が最高だ。靴や湯沸かし具などを放り出してテント内はすっきり快適。いくら広い前室でもBushbuddyで焚き火をするわけに行かないので、ゴトクだけ使いエスビットでみそ汁用の湯だけ湧かした。





水を全量担ぐ場合フリーズドライに拘る意味が無いので、焼き鯖寿司。疲れた体に酢めしが美味い。





雨の間テント内で仮眠して過ごした。夜九時頃になって雨が上がったが今度は突風が吹き始めた・・・耐候性のテストには申し分ない。残念ながらBushbuddyと星空はお預けだ。突風は時間と共に強くなる。遥か遠くから唸りを上げて近づいて来る。コブシ峰はモロに風の通り道になっている。タイベックの前室はしっかりと突風に耐えていたが、日付も変わろうかとする頃ひと際大きい唸りを上げる突風が吹き付けた。瞬間前室のペグが引き抜かれ吹き飛んで倒壊した・・・ 慌てて飛び起きテント内に前室を引き込んだ。破れたような気配は無いので、やはりペグの効きが甘かったようだ。突風の中前室を張り直す気にもなれずそのまま床に着いた。
今まで何度も突風で痛い目に会っているが、つい見晴らしの良い場所に張ってしまう。しかし今回ので懲りた。ちゃんと樹林帯に張ろう。御来光が見たいなら朝の散歩がてらハイクアップすれば良い。


つづく