2011-06-02

尾鷲道  二日目

5:00 起床

冷え込みはそれ程でもなく5℃前後。BackCountryBlanketのダブルバッグで保温は充分だったが、風の音がうるさくて眠りが浅かった。天気は晴れてるようだが、黄砂のせいか霞が強い。御来光はちらりと赤くなっただけで夜が開けてしまった。
昨日集めた薪が手つかずであったので、朝は思う存分燃やした。




朝食はサラミチーズサンドとVIAコーヒー。




今日もそれ程急ぐ行程でもないので、昨日悪天で見る事が出来なかった周りの景色を堪能しながらコーヒーをもう一杯。滝口尾根が良い崖出してる。




6:40 コブシ峰を出発

コブシ峰からのザレた下り。冬枯れのモノトーンな景色の中にヒメシャラだけが赤く浮き上がっていた。
昨日と比べるとトレイルの状況が少し変わった。コブシ峰以南は明らかに踏み跡が薄くなり、テープの間隔も広くなったようだ。おそらく大台ケ原からコブシ峰をピストンで歩く人が多いらしく、尾鷲まで通すのは稀なようだ。




7:02 一本木

コブシ峰から下ると、広い尾根に明るい森が広がる。そこに一本木の票(個人)ここから30分程歩いた先の細尾根にも一本木の票(公)有り・・・ 呆れる。もはやこの山域同じ地名が複数箇所あると思った方が良さそうだ。こうなっては道標をあてにせず、地形を見て現在地を確認する方が確実。




しかし素晴らしく雰囲気の良い森! ここを泊地にしなかったのを後悔した。次ぎ来るなら迷わずこの森に張る。
いちおう道をたどってる筈だが、足首が隠れる程落ち葉が積もっているので踏み跡は分からない。




一本木を過ぎると、尾鷲道は西側の山腹のトラバース。それと別に稜線上を歩くルートも有る。昨日と同じパターンだ。とりあえず尾鷲道をトレースしようと言う事で山腹路を行くが、やはり山抜け箇所が多くて歩きづらい。木組峠の手前では大きくえぐれていて、巻いている内に稜線の木組峠まで上がってしまった。

8:00 木組峠





一旦明るい稜線に出てしまうと、日陰の山腹路を倒木を避けながら歩く気にならず、ここからは稜線上を行く事にした。




8:43 新木組峠
新? まただ・・・ あまりに紛らわしいのでクレームでも来たのだろうか。完全に後書きで新と書き足してある。もう好きなようにして下さい・・・





新木組峠で道は東側斜面に切り替わる。かなり急な斜面をトラバースするが、古道を感じさせる古い石組みが多く出て来る。





うっすらと踏み跡は見えますが、道は消えようとしている。やはり入山者が少な過ぎる。今日は未だ誰にも会っていない・・・









9:08 神明水
流れてると言うよりは岩が濡れているといった感じ。何となくやばい気がして多めに担いで来て良かった。二人とも各1L以上残っている。この水場をあてにしていた昨日の二人はどうしたのかな?心配だ。



山抜けには橋があるが、それも抜けている。慎重に渡る。



9:51 又口辻
ここで台高の主稜線と別れる。辺りには古い酒瓶が多く転がっている。山仕事の人だろうか。ここを境に下は植林帯となる。気分的にはここからが下山といった感じだ。




又口辻より五分程で古和谷分岐。道は橡山方面と古和谷に別れているが、どちらが本来の大尾鷲道なのか調べても良く分からなかった。ただ古和谷はトロッコの廃線跡が有るらしいので、それ目当てで古和谷を選んだ。向かう予定の古和谷はマジックの手書きスペックだ・・・しかも廃道と? 一応事前調査で歩けるらしい事は分かっていたので気にせず進む。




狭い植林の中の道。暫く尾根筋を行き右手の急斜面に降りる道となる。植林の中は赤テープでなく、青いビニール紐をたどれば良い。




植林帯のつづら折れで一気に高度を下げ、沢の音が聞こえると古和谷に出る。道は川床までは降りずに、そのまま左岸の少し高い場所を通っている。すぐにでも清流で顔でも洗ってさっぱりしたいが、この先に徒渉点があるのでそこまで我慢。



11:04 古和谷徒渉点
谷に降り立った瞬間、複数の黒い影が散ったのを見逃さなかった。パーマークまではっきり見えた。アマゴの谷だ!しかもかなり魚影が濃い。テンカラ竿を持って来なかったのを激しく悔いた。実は一度竿をパッキングしたのだが、手持ちの竿は仕舞寸が長くザックの上端から盛大に出ていたので、今回はまあ良いかと、置いて来た・・・ 仕方ない、また釣り装備で訪れよう。


裸足になり膝まで水に入りクールダウン。あまりに気持ちよい場所だったので、ここで30分程休憩した。


徒渉して右岸がトロッコ道となる。高低差が無く歩き易いが、崩落箇所が多い丸太橋を数十回渡る事になる。完全に落ちている箇所は無かったが、いつ落ちてもおかしく無い奴も多かった。

 


トロッコ道はほぼ水平に続いているので、当然谷底からの高度差がどんどん増して行く。谷底が見えなくなる程離れた所で一旦トロッコ道が終わり、谷底に向けてつづら折れの道になる。再び古和谷に近づいた所で、またトロッコ道が始まる。このまま暫くトロッコ道が続くが、古和谷の魚影が気になってしょうがない。よそ見ばかりして歩いていたので、この区間の道の記憶があまり無い・・・ 下側のトロッコ道の方が歩き易かったように思う。






12:10 林道終点 
林道に出て一安心だが。ここからが長い林道歩き一時間半、国道歩き一時間をこなして尾鷲の町に向かう。国道もバス路線で無いのでひたすら歩く。





14:38 尾鷲駅
港町である尾鷲に着いた。最後は美味しい魚介料理で締めたかったが、ランチには遅い時間で駅前通りの店は全て閉まっていた・・・ 仕方なく一軒だけ開いていたお好み焼き屋で焼きそばを食った。





大台ケ原から海まで。距離で言うと大した事は無いが、達成感は強く良いルートだと思う。逆順で尾鷲スタートで歩くか?と聞かれると、微妙・・・ 国道と林道が辛過ぎる。でも古和谷には釣り竿担いでまた行くよ!





2011-05-30

尾鷲道     






以前から気になっていた台高深南部尾鷲道を歩いてきた。山と高原地図では全て破線で木組峠以南に至っては主稜線でありながら未掲載・・・歩く人も少なく年々荒れて行く一方という不遇のトレイル。大台ケ原へ至る道の中で最も古く、信仰の道でもある。気分的には海から山へ、尾鷲から大台ケ原への登りルートで歩きたかったが、大台ケ原発の帰りのバス便が少なく不自由なので、尾鷲に向けての下りルートを選んだ。下山後に海の幸で締めるのも悪く無い。


5月3日〜5月4日

大台ケ原ビジターセンター→日出ヶ岳→尾鷲辻→白サコ→雷峠→コブシ嶺(幕営)

コブシ嶺→一本木→木組峠→又口辻→古和谷分岐→古和谷→古和谷林道→尾鷲駅

面子は嫁さんと二人。

早朝から電車、バスを乗り継ぎ大台ケ原へ向かう。上市の駅からの大台ケ原直通バスは新たに和佐又登山口を経由するように変わっていて、大普賢へ行くのに便利になっていた。

10:30 大台ケ原ビジターセンター着

天気は薄曇り。おまけに黄砂が酷い日で数百メートル先が霞んで見えない。台高を歩く時は大峯の山並みを眺めながら歩くのが楽しみの一つだが、今日はたとえ晴れても大峯は見えなさそうだ。残念。

まずは今回のハイキングの最高峰となる日出ヶ岳に向かう。
大台ケ原の周回路は綺麗に整備され、ジーパンにスニーカーな人もちらほらで、でかザックな人は皆無。



泊予定地まで水場が無さそうなので、日出ヶ岳手前の水場で6L補給。(二人分)少し少ない気もするが、晩飯は湯戻ししないメニューにしたので大丈夫だろう。ぼくが4L嫁さんが2L担いだ。この量を外ポケットに入れると重心バランスが悪すぎるので、ザックの背面上部に来るようにパッキングした。





11:26 日出ヶ岳
黄砂で遠景は望めず。皆さん展望台でお弁当タイム。僕らは行動食を少しついばんで、尾鷲に伸びる稜線を確認して出発。








立ち枯れの正木ケ原の立派な木道。黄砂のおかげで更にシュール。今日の行程は飛ばし過ぎると泊予定地に早く着き過ぎるので、カメラ片手にのんびりハイク。




12:36 尾鷲辻

立派な東屋の裏手に伸びる踏み跡が尾鷲道。大台ケ原周回路の真新しい道標には尾鷲辻と表記はされていても、尾鷲道は記されていない。そこに道など無いかのような扱いだ。東屋で休憩中な方々から何処へ行くの?的な視線を背中に受けながら、ベコベコの火の用心看板の先に進む。道はこれしかないし、これが尾鷲道のようだ。






大台ケ原から別れた尾鷲道は雰囲気の良い明るい広尾根を緩やかに下って行く。道標の類は無い代わりにビニールテープの目印がかなりしっかりと巻かれている。踏み跡は案外しっかりと付いている。尾鷲道は稜線の西側をトラバースするように付いているが、稜線上を行く道も有るようだ。今回はある程度忠実に尾鷲道をたどったが、やはり山腹の道は倒木や山抜け箇所が多く、結局それらを巻くのに稜線近くまで追い上げられるので、稜線を通して歩いた方が快適そうだ。














15:09 雷峠?

地倉山をトラバースしてると右手から枝尾根が合流してくる。そこにまるで峠の目印で有るかの様に一本の杉の巨木がある。これが人の感覚を騙すような枝尾根の付き方で、何の疑いもなく大杉の前を通り枝尾根に乗ってしまった・・・ 進む事十分程で何となくコンパスを確認すると北上している。間違えて1402ピークに向かっているようだ。急いで大杉の地点まで戻った。




大杉の前に落ちていた看板。個人の山行記録を記した看板というのは初めて見た。しかもそこに記されたコースは、解る人には解ると思うが台高と大峯を繋いだとんでもないルートである。酒の席で冗談で決めたような山行計画だ。



どうもこの界隈、個人で掲げた看板、公の看板、地形図の表記が微妙にずれているようだ。地形的にはこの大杉の地点が峠だと思うのだが、山と高原地図にはもう少し南の何でもないような地点を雷峠と記している。


ここで同じ方に行く二人組のハイカーに出会った。少し話すと尾鷲道経験者のようだが、水を担いで無いらしい・・・遥か先の神明水という水場をあてにしてるらしいが、そこに着く頃には暗くなっているだろうし、水が出てるかどうかさえ怪しい。こちらも分けれる程の水は持っていないので、そのまま別れたが大丈夫だったのだろうか?



大杉の地点から北東に伸びるザレた急登の道が本来の道だ。そこを登りきるとなぜかコブシ峰と記された標(個人)が落ちていた。地形図ではもう少し先のはずだが・・・ 現在地に自信が持てないというのは何とも気持ちが悪い。進むべき方向にいかにもそれらしいハゲ山のピークが見えるのでそちらに向かう。











16:04 コブシ峰

ここでやっと公の道標で一安心。地図記載の嶺と峰の違いはあるが、細かい事は気にしない。そろそろ泊地を決めなければならない時間だ。事前の調べではここから少し下った樹林帯で幕営される方が多いようだが、今回は先日自作したテントの前室の耐候性のテストをしたかったので、この吹きさらしのハゲ山ピークに張る事にした。フラットで良い場所があったが、地盤が柔らかくペグの効きが少し甘い。





設営を終えると同時に雨が降り出したが、まだ仕事が有る。薪集めだ。メインの火種にBushbuddyを持って来たので、雨にやられる前に急いで拾い集めた。晩飯は少しの湯で済む献立にしてあるが、星空を眺めながらちびちびBushbuddyに薪をくべながら過ごしたい。ささやかな贅沢品である。


雨の日は広い前室が最高だ。靴や湯沸かし具などを放り出してテント内はすっきり快適。いくら広い前室でもBushbuddyで焚き火をするわけに行かないので、ゴトクだけ使いエスビットでみそ汁用の湯だけ湧かした。





水を全量担ぐ場合フリーズドライに拘る意味が無いので、焼き鯖寿司。疲れた体に酢めしが美味い。





雨の間テント内で仮眠して過ごした。夜九時頃になって雨が上がったが今度は突風が吹き始めた・・・耐候性のテストには申し分ない。残念ながらBushbuddyと星空はお預けだ。突風は時間と共に強くなる。遥か遠くから唸りを上げて近づいて来る。コブシ峰はモロに風の通り道になっている。タイベックの前室はしっかりと突風に耐えていたが、日付も変わろうかとする頃ひと際大きい唸りを上げる突風が吹き付けた。瞬間前室のペグが引き抜かれ吹き飛んで倒壊した・・・ 慌てて飛び起きテント内に前室を引き込んだ。破れたような気配は無いので、やはりペグの効きが甘かったようだ。突風の中前室を張り直す気にもなれずそのまま床に着いた。
今まで何度も突風で痛い目に会っているが、つい見晴らしの良い場所に張ってしまう。しかし今回ので懲りた。ちゃんと樹林帯に張ろう。御来光が見たいなら朝の散歩がてらハイクアップすれば良い。


つづく












2011-03-23

MYOG ファーストライトの前室

夫婦山行で最も使用頻度の高いファーストライト。荷物の少ない夏場はまだしも、防寒装備がボリュームアップする雪中泊ではテント内は酷い有り様で、冬用シュラフを二本並べると床面が見えなくなり、小道具類はテント内遭難多発。勿論湯沸かしは外で行う事になる。晴れなら良いが、吹雪いてる時は辛過ぎる。前室が欲しい・・・が、メーカー純正オプションは、重量が610gと、とても許される重量ではない。総重量2kg弱ならもっと広いテントがいくらでもある。なので、作ってみた。柱にトレッキングポールを使うタープ型なら軽く仕上がりそうだ。



素材はソフトタイベックを使った。シルナイロンやキューベンを使った方が軽く仕上がるけど、僕は縫製スキルゼロで、嫁さんは簡単な巾着袋を作る程度の経験しか無かったので、気軽に切った貼った出来そうなタイベックを選択。透湿性が有るのも決め手。補強の当て布にダイニーマXグリッドストップ、コイルファスナー等々、素材は全てOMMにて調達。
CADや図学のスキルは無いので、室内にファーストライトを張って現物合わせで型紙を作った。さて、縫うかとなった所でつまづいた。ミシン糸の事を何も考えていなかった。どんな糸と針で縫うのか?家に有る裁縫の入門書にはタイベックテントの縫い方なんて書いてる分けないし・・・で、OMMのオーナーであり、先日の北八ツで御一緒したJoさんに問い合わせた所、丁寧に勘所を教えて頂いた。要約すると、

・ポリエステルのスパン糸
・出来るだけ太い糸を細い針で縫う
・ピッチは細かすぎず大きすぎず

各ミシンの性能が違うので何番の糸を何番の針でというのは一概に言えないようだ。とりあえず糸と針を三種類ずつ用意して色々な組み合わせを試してみた。希望としては一番太い30番で縫いたいけど、細めの針だと上手く縫えない。結局、糸50番、針9番に落ち着いた。あと、ファスナーを縫い付けるのにファスナー押さえと、コンシールファスナー押さえというミシンの押さえのオプションパーツを手芸店で購入した。



縫い代は、手元にあるMLDのDuoMidを参考にした。リッジラインは折り伏せ縫い、裾周りは一度だけ折り返した。
不意に目が詰まったり、針抜けしたりと苦戦したが(嫁さんが)、縫い始めると完成までは早かった。

気になる重量はシームリング無しで188g。予想より軽く仕上がり大満足!
ファーストライト本体はFibraplexのカーボンポールに換装して1115g(シーム済み w/o peg sac line)なので、前室を含む総重量が1303gとなった。





広さも充分。靴と湯沸かし具を置いてもまだ余裕がある。



換気口の笠の部分はタイラップを通してテンションを出している。湯沸かしもして一晩寝てみたが、全く結露しなかったので換気は上手くいってるようだ。



ジッパーは一番テンションの掛かるリッジラインを避けて3cm程側面にオフセットさせている。






質感は正に障子紙。意外と中は明るい。



未だ雨風にはさらされていないので、耐候性は未知数。構造的には風には強そうだがどうなんだろう。とりあえず、シームして完成としよう。